Act6-7

「さくらくん! おい、さくらくん!」
 何度もさくらに呼びかけるが、返答はない。しかし、その間にも戦いは続いている。
「隊長! すまねぇ、一匹そっちにいっちまった!」
 カンナの声に弾かれるように反応した大神は、その一匹を切って捨てた。
(今は黄泉兵を倒すのに専念しなくては皆が危ない!)
 大神はとりあえず戦闘に復帰することを決めた。
「でぇい!」
 大神の二刀が、
「土に戻りなさい!」
 マリアの速射砲が、
「寄らば切りますわよ!」
 すみれの薙刀が、
「アイリス、頑張るもん!」
 アイリスの霊力が、
「ほいほいほいほいほい!」
 紅蘭の加農砲が、
「はぁぁぁ、どりゃぁ!」
 カンナの拳が。
 次々に黄泉兵を捉えていく。
「中尉! 仕上げますわよ!」
 すみれはちらりとさくら機を見る。だが、まるでガラクタのように生気がない。
(張り合いのない……ならば、見せ付けてあげますわ!)
 すみれ機は大神機と並んだ。
「髪に揺れるは乙女の心」
「胸に抱くは帝都の未来」
「あなたと」
「きみの」
「情熱よ、ここに」
「赤熱鳳仙花!」
 大神とすみれの霊力が赤い奔流となって、戦場を舐める。
 黄泉兵の最後の一群もこれで駆逐された。
「どうやら、雑魚もこれで終わりだな。ヒルコ! 覚悟を決めて戦え!」
 大神は雄々しく吼える。
「確かにこれで私の出番となったようだな。だが、私が黄泉兵達を無駄に消耗したと思っているのか?」
「なんだと?」
「貴様らの機体、そう神武とやらが、長時間の戦闘に適さないのは先刻承知」
 無数の黄泉兵をぶつけることで神武の消耗を誘っていたのである。
「さあ、私が相手をしてやろう」
 ヒルコはゆっくりと空中から降りてくる。帝撃など敵ではないと言わんばかりに、まるで無防備な姿だ。
「見逃すかよ!」
 焦れたのか、カンナが飛び込んでいく。
「待て、カンナ!」
 大神の制止も聞かず、カンナはまだ空中にいるヒルコめがげて、技を繰り出そうとする。
「喰らえ! 空中二段蹴り!」
 だが、ヒルコはおちついている。
「慌てる乞食は貰いが少ない言うだろう。焦ってはいかんな」
「寝言はこいつを受けてからいいな!」
 カンナの最初の蹴りが命中するかに見えた時、ヒルコは大きく吸い込んだ息を一気に吐き出した。
「喝!」
 その一喝で、カンナ機はもろくも地面に叩き付けられた。
「な、なんだと?」
 そして、カンナを襲った衝撃波は大神達にも襲いかかる。煽られて態勢を崩しかかり、慌てて踏ん張り直した。
「なんて力だ!」
 手を出す事すらせずしてこの力である。
「ふはははは。今更、私の力に気づいたのか? だが、もう遅いわ!」
 完全に戦場へと降り立ったヒルコは初めて身構える。それだけで、空気が震え、圧力となって神武を襲う。
(これほどとは!)
 かつて、サタンと戦った時にも似たような経験はした。だが、あの時と違ってあやめ――ミカエルの加護はない。単に花組がうける脅威は、あの時以上だ。
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