Act3-4

「お疲れ様」
 公演が終わり、サロンに集う花組のところに、大神が顔を出した。
「あ、隊長……今日の劇、見てましたか?」
 おずおず、といった感じでマリアが切り出した。
「ああ。初めての演目だから、見させてもらったよ。マリアの衣装も可愛かったよ」
「そんな……恥ずかしい」
 顔を赤らめる。
「恥ずかしがることはないよ。マリアだって女の子なんだから、普段からああいう服を着ればいいのに」
「隊長、からわかわないで下さい」
「大神さん!」
 なーんとなく、ラブラブちっくな雰囲気に面白くないさくらが口を挟んだ。
「私はどうでした?」
「そうだなぁ。さくらくんの男役は初めて見たけど、結構、はまってたね」
「そうですか? よかった」
 こうなると、すみれも黙っていない。
「中尉。私のエレガントな演技はいかがでした?」
「え、えれがんとねぇ」
 そう断言されてしまうと何も言えない。
「い、いつものことだけど、演技はうまいよね」
「そうでしょう? この天才・神崎すみれにかかれば、どんな役でも完璧にこなしてみせますわ」
「はいはい。いつものことながら、見事な化けっぷりやったで」
「……紅蘭。あなたの言い方は一々、毒があるような気がしますわね」
「そんなことあらへんで」
 などと雑談していると、ブザーが鳴った。
「みんな、地下作戦室に集合だ!」
「了解!」
 一斉に花組が駆ける。
 そして、各々が廊下の壁にある「フタ」をあけると、そこに飛び込んでいく。蒸気作動の機械により、普段着はあっというまに戦闘服へと変る。シューターの出口となるイラストボードがせりあがり、スピードを殺さぬまま着地すると勢いを利して駆け出す。
(そういえば、最初のときはこの出口で尻餅をついたっけ)
 そんなことを思い出しながら、地下作戦室に大神は駆け込んだ。
「帝國華撃團・花組、全員集合しました!」
「うむ。早速だが、乃木神社に降魔が出現した。ただちに迎撃せよ」
「了解。帝國華撃團・花組、出撃します!」

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