Act2-4
「全く。やっぱり裏切ったんだな、あのヘビ女が!」
帰りの蒸気鉄道の中で、カンナはひとしきりすみれの悪口を並べ立てる。だが、大神もそれを止めなかった。彼自身、話に聞いていたとはいえ、実際にすみれの反応を目の当りにすると、ショックを隠しきれなかったのだ。
「大神さん……すみれさん、何か深いわけがあるんですよ」
さくらが一生懸命に大神を力づけようとする。
「ああ、そうだな。今日は駄目だったが、まだチャンスはあるさ」
だが、カンナが異議を唱える。
「何いってんだよ、隊長! あんな奴に振り回されることはない! 花組はすみれがいなくても十分にやってけるさ!」
「………」
丁度、列車が帝劇前につく。
三人が無言のまま列車を降りると、椿が駆け寄ってきた。
「どうしたんだい、椿くん?」
「大神さん! それにさくらさんもカンナさんも大変です! 早く地下へ!」
「!!」
「三人とも、遅いぞ!」
すでに米田以下、他のメンバーは全員集結している。
「申し訳ありません。私の責任です」
「まあいい。外出を許可したのは俺だからな」
それを他人に責任転嫁するほど愚かな米田ではない。
「それよりも敵が現れている」
「なんですって?」
スクリーンに写ったのは明治神宮だ。
「畜生、またミロクか」
「大神。出撃だ!」
「はい!」
各員が神武に乗り込む。
「いくぞ! 帝國華撃団、出撃せよ!」
轟雷号に神武が搭載され、貨車と機関車が連結される。
連結が正常終了をしたことを示す緑灯が点灯した。同時にゴトンという音が響き、線路もろとも轟雷号に角度が与えられていく。きしむような悲鳴をあげて蒸気圧が重力をふりきり、垂直にまで持ち上げられる。
「各部状況全て良好。轟雷号、発進!」
ロックが外れる。同時に蒸気機関が全力運転を開始し、重力とともに轟雷号を急加速させる。
「くっ」
大神が思わずうめく。
久々の轟雷号での出撃だ。その強烈なGを身体が忘れている。
(やれやれ、情けないな)
轟雷号は螺旋を描きながら徐々に水平へと移行していった。
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