Act4-3

「パパ! ママ!」
 サロンで待っていた両親の許に、公演の後始末をようやく終えたアイリスが飛び込んでいった。
「あのね、アイリスね。パパとママに話したいことがたーくさんあるんだよ!」
 両親の懐に頬をうずめるようにしてアイリスが言う。シャトーブリアン夫妻も目を潤ませながら、彼女を静かに抱きかかえる。
「感動の再会やな」
 感激屋の紅蘭はもう涙を滲ませいている。他の花組のメンバーもほほえましくシャトーブリアン一家をみつめていた。
「大神さん。アイリス、やっぱり寂しかったんですね」
「ああ。そうだな」
 だが、そんな感動の再会を無粋なブザー音が引き裂く。
「くそ、こんな時に!」
 敵の出現だ。
「アイリス。悪いけど……」
「わかってるよ、お兄ちゃん」
 アイリスは毅然と言う。
「アイリスは帝都を守る帝國華撃團の一員だもん! いつだって、戦うもん!」
 大神は優しさをたたえた笑みを浮かべ、頷いた。アイリスだって、成長しているのだ。
「よし、いくぞ!」
「帝國華撃團花組、全員集合しました」 「うむ」
 早速、大型受像機に映像が投影された。
「降魔が増上寺に出現した。至急、出動してくれ」
 米田が命令を下す。
「了解!」
 各員が神武に乗り込む。
「帝國華撃團、出撃せよ!」
「帝國華撃團、参上!」
 増上寺に駆けつける帝國華撃團。
「いくぞ!」
 大神の掛け声とともに神武が一斉に動き出す。
 だが、気合とは裏腹、あっという間に黄泉兵は駆逐されてしまった。
「もう、終わりなの?」
 マリアが罠でもあるのではないかと、いぶかしげに呟きながら周囲を警戒する。
「そういえば、親玉もいねーぞ!」
 カンナの言う通り、雑魚ばかりだ。
「警戒を怠るな!」
 だが、いくら待っても、それ以上は何もおきない。
 結局、花組は引き上げるより他になかった。
「すぐに終わってよかった!」
 アイリスは上機嫌だ。
「よかったわね、アイリス」
 さくらの言葉にアイリスは素直に返答する。
「うん。だって、これでパパとママと会えるもん!」
 今からなら、夕食を供にすることはできるだろう。
 だが、そんな上機嫌なのはアイリスだけ。他の隊員達は今ひとつ腑に落ちないという表情だ。
「なにがなんだか、訳がわかりません」
 大神も困惑気味に米田に報告をしている。
「ふむ。そいつはおかしいな」
 普段の米田とはうって変わった厳しい表情だ。それは日露戦争の知将として鳴らした有能な軍人としての姿だ。
「戦力の分散、逐次投入は戦争において最も犯してはならない愚行だ」
 だが、結論が出る前に警報音がけたたましく鳴った。
「また、敵!?」
「今度は後楽園だ。いけ、大神!」
「了解!」
 再び神武に乗り込む帝撃・花組。
「あーあ。パパとママに会えると思ったのに!」
 アイリスが気落ちしたように呟く。
「ごめんな、アイリス」
「ううん。いいの。お兄ちゃんが悪いわけじゃないもん。アイリス、頑張るっ!」 「よし、いくぞ!」

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